ソフトの力、五輪に ─しなやかな都市へ─

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ソフトの力、五輪に ─しなやかな都市へ─

2019-08-01

 東京五輪の開会式まで1年を切った。200を超える国・地域からアスリートが集まる平和の祭典は、今後の都市や社会を描く実験場でもある。「TOKYO」は未来にどんなメッセージを届けられるだろうか。


◆遠隔勤務 60万人が試みる◆
 7月24日昼。競技会場に近い東京・豊洲のとある企業は、普段混み合う食堂がガラガラだった。大会を見据えた混雑緩和の実証実験で、社員の約半数がテレワークや時差出勤をしたためだ。自宅で働いた30代の女性社員は「満員電車に乗らずに済み、仕事も効率的に進められた」と話す。
 東京圏の鉄道は、11路線でラッシュ時の混雑率が「体が触れ合う」状態の180%を超す。延べ約900万人が観戦に訪れる五輪は、こうした都市の現状に変革を迫る。

 9月6日までの実験で2000社・団体、60万人以上がテレワークを試す。総務省によると、導入企業は米国で8割を超すが、日本は2割未満で社員の利用率も低い。
 千代田など都心5区の24日の出勤者は2週間前より4%減った。本番へさらなる取り組みが不可欠だが、制度に詳しい明治大の市川宏雄名誉教授は「これほど大規模なテストは例がなく働き方を変えうる」と指摘する。
 新幹線などが整備され東京の骨格がつくられた1964年大会から半世紀あまり。インフラは老い、きしみが目立つ。

 首都高は当時の10倍、320?に延伸する一方、老朽化で補修が必要なひびや腐食は8万件を超す。東京港が輸出入するコンテナは施設容量を3割上回り、パンク寸前。物流が滞りかねない。
 インフラの抜本的な整備や更新は進まず、豊かさはハードで実現できない。東京大の吉見俊哉教授は「都市づくりは『より速く、高く、強く』ではなく、『楽しく、末永く、しなやかに』を追い求めるべきだ」と説く。
 「ないことを悔やんでも仕方ないが……」。都の幹部は「環状2号線」の整備の遅れを嘆く。
 旧築地市場(中央区)の跡地に地下トンネルを通し、臨海部と都心部を結ぶ「大静脈」となるはずだった。ただ築地の豊洲市場(江東区)への移転が延期され、全線開通は大会後にずれ込んだ。


◆解決の糸口はソフトの力◆
 手を打たなければ期間中の首都高の渋滞は2倍に膨らむ。解決の糸口はソフトの力にある。多数の入り口を閉鎖するなど大規模な交通規制を試みる。通行料金を上下させる「ロードプライシング」の導入も検討中だ。
 東京の65歳以上の割合は23%を超す。空き家は80万戸と、全国の1割近くを占める。1385万人に膨らんだ人口も25年以降は減少に向かう。
 ハード整備とともに歩んだ首都は成熟し、抱える課題は数多い。しかしソフトの挑戦で変えられるものはある。都市の在り方が問われている。

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