首都高の日本橋区間、地下化が決定─「3200億円の青空」に賛否─

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首都高の日本橋区間、地下化が決定─「3200億円の青空」に賛否─

2018-10-18

70年ぶりに東京・日本橋に復活する青空の値段は──
首都高速道路の日本橋区間の地下化が決まった。事業費は約3200億円。当初の想定の4000億〜5000億円からは大幅に圧縮したものの、わずか約1.2?の地下道路に巨額の費用を投じることになる。青空にかけるコストの賛否は東京と地方の対立の構図も映している。
「日本橋の首都高地下化は東京の価値を高める象徴だ。国際金融拠点にふさわしい街に生まれ変わるように取り組む」
 東京都の小池百合子知事は9月下旬、都議会で計画の見直しを求める都議に対し具体的な作業を進める方針を強調した。

 地下化するのは東京駅北側から江戸橋ジャンクション近くまでの約1.2?。着工は2020年東京五輪・パラリンピック後。工期は未定だが、10〜20年かかる見通し。1964年の東京五輪前に開通した高架を撤去し、日本橋の上に広がる空を取り戻す計画だ。


■再開発と一体
「長い運動だったので感無量だ。東京の中心としてにぎわいを生み出したい」
地下化が決まった直後の7月下旬。毎夏恒例の橋洗いの行事で名橋「日本橋」保存会の中村胤夫会長(三越元社長)は喜んだ。地下化は2000年代以降、浮上しては消えてきたからだ。
 05年には当時の小泉純一郎首相が経団連の奥田碩会長ら有識者に検討を依頼。06年には民間再開発とセットによる地下化を提言したが、5千億円規模とされる事業費を前に機運はしぼんだ。
 再開発ラッシュの東京。長く停滞していた議論がまとまったのは、その民間再開発が動き出したのが理由だ。三井不動産と野村不動産の再開発は政府の国家戦略特区の認定を急いでいた。目標は18年春まで。認定を受ければ、完成までの期間を大幅に短縮できる。
 地下化ルートは再開発エリアの下を通る可能性が高かった。このため、「時間が迫っており、再開発と一体で調整する必要があった」(首都高の宮田年耕社長)。日本橋の地下には上下水道や電力設備が埋まり、地下鉄も走る。コースの選定は「針に糸を通すような難しい調整が必要」(当時の森昌文・国土交通省技監)。この機会を逃すわけにはいかなかった。

 昨年11月、国交省と都などで設けた地下化検討会はルートに加え、もうひとつ大きな議題があった。事業費の圧縮だ。
 地下化に向け一斉に動きだした関係者が神経をとがらせたのは巨額に膨らむ事業費。特に地方からの反発を警戒した。「地方なら1?あたり数十億円で高速道路はできる。『たった1?に数千億円もかけるとは何事か』と地方出身の国会議員から批判されていた」(首都高幹部)からだ。


■既存道路を活用
針の穴を通すコース選定と事業費の圧縮──。
 2つの課題を解決するため関係者がひねり出した答えは「既存道路を活用し工事の規模を抑える」。交通量が比較的少ない首都高の他のルートに車両を誘導。地下に新設する道路の数を減らし工事範囲を抑える手法だ。
 費用分担にも配慮がにじむ。関係者がこだわったのは「高速料金を値上げしない」「税金投入は最小限」の2点。税金による負担は都と地元、中央区の400億円だけ。「当初想定よりかなり少なく済んだ」(都幹部)
 それでも3200億円で世論が納得するかとの不安は残った。国交省は公表に先立ち、首相官邸の了承を得に回った。自民党総裁選を控える官邸。「地方からの反発を一番気にしていた。事業費を下げた結果、異論は出なかった」(同省幹部)

 日本橋では歴史的建造物の野村証券日本橋本社ビルの外観を残しつつ超高層ビルを建て、船着き場もつくる計画。対岸では三井不動産が江戸情緒を再現する街づくりを進め、一部では木製の日本橋を復元する構想もある。
 五街道の起点で江戸の中心だった日本橋の復活。明治大の市川宏雄名誉教授は「これだけの規模で街を復活させる試みは世界でも例がない。街づくりの波及効果により、地下化の費用対効果は高い」と指摘する。
 青空にかける3200億円は賢い投資となるか、それとも感傷的な浪費に終わるのか。結論は日本橋の街づくりの成否にかかっている。

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